まだ見ぬ土地と地と人①
車で、東北を巡りました。
宮城と岩手の太平洋側は、初めての訪問。
何年も経ったとはいえ震災の色はまだ濃く、平らな区画と新しいコンクリートの色が目につきます。
海岸沿い以外の内陸部でも、仮設住宅や新しく建て替えたような家が多くありました。
生きているうちにあるかないかの大型連休。
引き寄せられるように巡った、東北の旅です。
1日目
予報では、予定している日程は全て晴れマークだった。
前日に予定していた伊豆大島への旅は流れてしまったものの、その分が振り替えられたような気持ちのいい週間予報。
お出かけ日和も甚だしいなんて。
いい旅になりそうだ。
9時に出発して、東北自動車道を北へ向かう予定だった。
渋滞情報を見ると浦和から羽生まで渋滞があるようで、抜けるのに3時間ほどかかるらしい。
早めに起きて正解だった。
こちらの方面はいつも浦和から乗るけれど、混んでいたのもあって今回は岩槻から乗った。
北関東以北はそれほど混んではいないようだから、この渋滞を抜ければなんとかなりそうだ。
2日ほど前に祖父の家にお邪魔したときにしたから、運転自体は久しぶりではない。
ただそのときも感じたけれど、車が多いとやはり気を使う。やはり、早いところ抜けたかった。
渋滞は、断続的だった。
完全に止まったり、すーっと流れたりの繰り返し。だらだら走るよりは、眠くならなくていいかもしれない。
音楽をかけてお菓子を食べながらゆっくりと走っていたら、前が急に開けた。
まだ古河の手前。
案外早く抜けれたようだ。
アクセルを踏み込んで、周りの車と競うようにして北へ向かう。
大宮、川口、練馬、足立、馴染みのあるナンバーがまだ多い。
皆どこへ向かうのかはわからないけれど、それぞれが別の場所に意志を持って向かうのは、なかなかおもしろい。
1つの場所にしか行けないのって、案外悪くないのかもしれないと思った。
羽生を過ぎてからは快調に距離をのばして、東北道をひたすら北へ。
関東から出るのは久しぶりで、新鮮な気分だった。
上河内で一度休憩を挟んでからは、しばらく走った。
通行手形。
高速で車も少ないので、疲れはそれほど感じない。なにより、天気がいい。
村田JCTで山形自動車道に乗り換えたら、正面に夕日がまわってきた。
少し眩しいけれど、サンバイザーは下ろさずに、なんとなくそのままにしておく。
宿は、無事間に合いそうだ。
長い下りを抜けたら、山形の市街地が見えてきた。
山形駅は、以前に一度訪れたことがあった。
その時は自転車を持っていて、局留めで届けた荷物を駅前の郵便局で受け取っただけだった。
当時は余裕もなかったのであまり詳しく覚えていないけど、楽しかったのだけは覚えている。
感情だけが残ってる思い出は意外とあったりするもので、(自分にとっては)それは大事な気がする。
チェックインをして部屋に荷物を置いてから、少し外を歩いた。
完全に日が落ちてしまっていたのもあって、懐かしさはほとんどない。
上着を持ってこなかったので、少し寒く感じた。
山形へ。
ふらふら歩いていると蕎麦の店があったので、そこに入る。
夕飯を食べながら、明日の天気を調べた。明日も晴れだ。明後日も、明々後日も。
こんなに楽しい週間予報もなかなかない。にこにこ。
運転が長くて疲れもあったので、早めに部屋で休むことにした。
ツーリングマップルを見ながら仰向けになったけれど、そのあとは覚えがない。
旅行先のほうが、家よりも寝れる。
もしかしたら、明日もアラーム前に起きるかもしれない。
睡眠に限って言えば、旅先でだけは子供の頃に戻れる気がした。
2日目
結局、目覚ましの音で目が覚めた。
小学生の頃なんかはそれこそ日出よりも前に起きたりしていたけれど、そうもいかなくなった。
やはり、年齢のせいかもしれない。そう考えると楽になることが、案外たくさんある。
朝食にパンとコーヒーが付いていたので、それを食べに行った。
旅行のときは、必ず朝食をとるようにしている。
1日の旅程を想像しながら食べるのが、最高に楽しい。どこに行っても、不思議と食欲がわく。
睡眠の話もそうだけれど、毎日旅行ならいいのになって、そう思うこともある。
仕事してるより、はるかに生きている心地がするような気がするんじゃないか。
心地だけして、生きていけないのかもしれない。
チェックアウトを済ませて、車に向かった。
ガソリンはまだあるはず。今日は、山形から田沢湖・小岩井農場を経由して盛岡の繋温泉までの予定だ。
雲がない。少し暑いくらい。
前に来たときも、同じくらいいい天気だった。天気のことは、なんとなく覚えてるもの。
今回は、そのときと同じルートを通ることに決めていた。
駅前を通って、国道13号線を北に向かう。
自転車が通れないところもあったけど、なんとなく見覚えがあるところもあって、楽しかった。
もう何年も前のこと。過去のことは、いつだって青く見える。
少し走ったら、天童の道の駅に着いた。
天童の道の駅。
前も寄ったところだったから、ここは覚えている。
ここにはノートが置いてあって、旅行者が書き込めるようになっていた。が、朝がまだ早かったために、ノートが置いてある場所には施錠がしてあって入れなかった。
何枚か写真を撮って、早めに発った。
天童は将棋のコマで有名だ。
この道の駅にも、中央の島がコマになっている足湯がある。人がたくさんいて、賑わっていた。
無料区間を挟みながら、しばらく北へ走る。
尾花沢、新庄と通って、秋田が近づいてきた。
最上川よりも北は、今までに訪れたことのない土地だ。
山間に家が見えるし、へばりつくような山腹の道をゆっくりと縫っていく車も見える。
パッとみただけでは住めそうのないようなところにも人間は住んでいるもので、便利さとか不便さとか、そういったものを無くして強く生きている。
高速の渋滞を抜けたときもそうだったけれど、それぞれが色々な生き方をしているのは、とてもおもしろい。
全て知ることはまず無理だけど、同じものがひとつもない分、退屈しない。
旅行っていうのは、そういった「生き方」を見にいくものなのかもしれない。そして、そんな旅行が好きなのだった。
秋田に入った。
桜が咲いているのが見える。前線は、どこだろう。
少し走って、道の駅雄勝で休憩をとった。
雲ひとつない快晴だ。人もたくさんいた。
ここから田沢湖まで一気に抜ける。
高速は使わないで、田園地帯をのんびり走った。
関東にはない独特の雰囲気だと思ったけれど、なにも知らされずに関東のどこかですと言われても、違和感はなかったと思う。風景なんてそんなもので、そこまでにいく時間とか費用とかそういったものがその風景の雰囲気を作っていくものだと思う。ただそれは近場では絶対に味わえないだろうし、遠征のいいところだと勝手に考えている。
次第に登りになってきた。エンジンに申し訳ないけれど、少し頑張ってもらう。登り切ったら田沢湖のはずだ。
久しぶりにハンドルを左右に切りながら、山道らしい道を登っていく。
何台か車をパスさせて、ようやく湖畔に着いた。雲もなく、湖面がよく映える。
近くの駐車場に車停めて、湖畔を向かった。
人はいたけれど、思ったほどではなかった。
こんなに綺麗なのだから、もっと見に来ればいいのにと思う。エゴか。少し違う。
お土産を買って、 田沢湖を左に見ながらハーブ園に向かった。
程よく人がいて、のんびりした雰囲気の庭園だった。
ちょうど昼時だったのもあって、さきに昼食をとる。おいしかった。
園内はそれほど大きくはなかったけれど、チューリップはじめ彩度豊かな花がたくさんあった。
色は人を幸せにするという言葉を思い出す。言ったのは誰だったかな。芸術家ではなかったような気がする。
車を走らせて、小岩井農場に向かう。
コーナーを何個もクリアする。
農場へはすぐに着いたけれど、駐車場に行くまでが長かった。
広い土地が、心地よく感じる。遠くが見えると、心に余裕が持てる。
視界が広い。
冷たいアイスを食べて、宿に向かった。
宿は、牧場から下ってすぐだ。
チェックインまでにはまだ時間があるけれど、少し早めに宿に向かうことにした。
女将さんは、明るく丁寧な方だった。
建物はかなり入り組んでいて、おもしろい。
ただ、不思議と清潔感がある。
好きな雰囲気。
荷物を部屋に置いて、夕食を食べた。
冷麺は、初めて食べる。これもおいしかった。
熱めの風呂に入って、早めに床につく。
明日も晴れるようだ。
ルートを確認して、眠りに落ちた。
ー 後半へ ー